外貨準備を減らせば為替相場は円高に

外貨準備を減らせば為替相場は円高に

復興財源に日本の外貨準備を活用すべき、という意見があるが、外貨準備という資産には、それに未曾有の負債があるため、資産だけ使うことはできない。

 

たとえば外貨準備として米国債を購入する場合、まず日本政府が外国為替資金証券{短期国債}を市場で発行し、金融機関に販売して円を調達する。市場でさばけない分は日銀が引き受ける。この政府の債務で米国債を購入している。

 

もし外貨準備を売って円にしたら、まずは債務を返済しないといけない。つまり、復興財源として外貨準備を使うということは、それに未曾有の国債を発行するのと同じことになる。おしなべて兆円単位で外貨準備を取り崩したら、為替市場におけるドル売与介入になり、必ず円高になる。

 

そもそも1兆1000億ドル(約90兆円)という外貨準備が積み上がったのは、1995〜99年と2003〜04年に政府が巨額のドル買い介入を行ったからだ。私か財務官だった95年には一時1ドル=80円台を突破する円高となり、産業界が悲鳴を上げた。そこでサマーズ米財務次官(当時)と合意したうえでドル買い介入を行った。03〜04年の40兆円にのぽる介入も溝口善兵衛財務官(当時)が米国政府と合意のうえので行った。

 

1兆ドルを超える外貨準備は先進国の中では過大、という指摘はあるが、過去に介入した結果であり、これを減らせばドル売り介入になり、円高になる。1ドル=80円を超える円高をいまの日本が望んでいるだろうか。1兆ドル超の外貨準備が維持されてきたのは、減らせば円高になるという政府の判断があるからだ。変動相場制の国は外貨準備を持つ必要はない、という意見もある。マーケットの変動に任せる覚悟があるのならそれは正論だ。しかし、いま80円を突破し、70円台、60円台になれば、必ず円高阻止の声が上がるだろう。

円安の備えた準備金でもある

一方で、極端な円安になった場合に備えて、ある程度の外貨準備を持っておく必要はある。実際、98年に日本が金融危機に陥り、1ドル=147円台に突入したときにはドル売り介入を行った。そのときの介入で外貨準備の10分の1を使った。この規模の介入を10回やったら外準は底をつくと思ったことがある。

 

為替介入には効果がないと主張する人もいるが、介入がマーケットの雰囲気を変えられるときには効果がある。市場に気迷いがある状態、あるいは行き過ぎた円高が進んでいるとき、政府の介入でマーケットの流れを変えられるなら、その介入は成功だ。しかし、為替が一方向に勢いよく動いているときに介入しても効果があるのはせいぜい1週間で、トレンドを変えられないケースも多い。

 

日本の外貨準備が米国債に偏びすぎていてリスクが高いという指摘もあるが、ドル基軸通貨体制の下でドルが国際決済通貨である以上、米国以外の国は急激な為替変動に備えて、ドル建て資産を持っておくべきだ。

 

米国債が無価値になることはありえないし、米国債の価格は変動するが満期まで保有していれば為替差損益以外のリスクはない。ドル基軸通貨体制は永遠には続かないが、少なくともあと20年、30年は続く。円高にならない外貨準備の多様化の方法としてドル建ての不動産や米国株を持つという選択肢はあるだろう。

外国為替市場(FX)は、NY時間後半に各通貨が急速にリバウンドした動きの反動で早朝にはユーロ円などが反落して取引を開始しているものの、米株の切り替えしがアジア株式市場に波及すると、再びリスク回避の巻き戻しの動きが活発化すると考えられる。昨晩の大きな混乱の要因となったベルギー金融機関のデクシアに対する支援が迅速に発表されており、更には英FT紙で欧州金融機関への資本注入がEUによってなされているとの観測報道もあり、金融市場混乱への懸念が薄らぎ始めていると考えられるからだ。